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透明なこころでありたい

連想書棚『抄本おむすびの味』→『京暮らし』

 先の日記で紹介した岡部伊都子氏の『抄本・おむすびの味』。
 この本に収録されているのは、ラジオ放送『四百字の言葉』の原稿である。
 4年間、毎朝400字の文章が放送されたのだ。
 この厳しい制限で、これだけの内容の文章を綴られたとは、本当に恐れ入ってしまう。
 私の大好きな一篇、落語家をモデルにした小説を取り上げた「生活を大切に」から引用。

 「尊敬する先輩と同じ道を歩こうとしても、自分の持っている感覚はその道のものではない。その矛盾を意識して、ものもろくに食べず、母に声もかけないほど苦しみ、自己嫌悪を味わうのです。
 しかし、そのあげく『自分はやっぱり自分以外にはなれないのだ』と悟りました。『自分は芸にどうしても媚が出るのがいやだったが、自分は気が弱いせいかどうしてもお客の機嫌をとるようになる。しかしそれが自分にとっては自然なのだ』と気づくと、それまでの悩みはきれいにぬぐい去られたのです。そしてすぐに芸ににじみ出てしまうその自分の生活を大切にしようと深く思い立ちます。
 生活を大切にしよう、ということは静かな生活を指すのではなく、『妥協をしないこと、ウソをつかないこと』なのだと彼は強く思い当たったのでした。」


 主張の歯切れのよさ、そしてこの一篇の素材となった小説の肝の部分をここまで要約してみせ、どんな小説か読んでみたい!と興味を惹く(ほんとに、今度どの作品のことなのか、探して読んでみたくなりました)構成のたくみさ。
 昨今流行りのなんとなく身辺の出来事をつらつらだらだら書き並べるエッセーと違い、どれだけ著者が勉強を重ね研鑽を積んできたかが明らかです。

 さて、この「自分にとって自然なこと」を通した別の随筆。
 やはり先年亡くなられた大村しげ氏の『京暮らし』 暮らしの手帖社発行。
 これまた昭和62年発行の古い本なので、どこにも画像がありませんでした(苦笑)。

 有名な雑誌『暮らしの手帖』の連載をまとめたもので、京都での暦にそった日常の行事や、昔から京都の人たちが食べてきたおかず、暮らし方の工夫が京言葉で綴られている。
 文章は標準語で綴られることが当然とされていた時代に、著者自身の言葉で書かれたというのはなかなかに画期的なことだったのではないだろうか。
 この本の内容も、日常のことに終始していながら、根底に保守的に見えて実は新しいもの好き、革新的といった京都人の本性がうかがえて、JR東海の「ディスカバージャパン」な宣伝の美々しさとはまた違った、古都の魅力的な側面を伝えている。
 昨今、自分が中年の深みに分け入り始めたせいか、こういった古風な本を読むのが楽しくて仕方なくなってきている。何度もおいしく味わえる、滋味のある本たちだ。
 
 
 
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コメント
No title
本日も素敵な言葉の数々です。
御紹介ありがとうございます。

読みながら「桂 枝雀」さんを思い出しました。
また、"伝統とは革新の中にあり"という京都人の持つ志も思い出しました。
感謝です。
2008/05/21(水) 15:29 | URL | ピノコッペ #-[ 編集]
>ピノコッペさん
せっかくためになる読書してるのに、本の内容に啓蒙されないで、結局ダメ母ちゃんやっておりますわたくしです(苦笑)。

桂枝雀さん、真面目な本当に真面目な方だったんですよね。
今生きていらしたら、とつくづく思います。
2008/05/22(木) 16:08 | URL | なかさん☆ #LeJya1lg[ 編集]
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鬱病回復途中。更年期障害。
長男自閉症。長女甘えんぼ。
家族総デブ。色々とやばい。


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